No.4

2011-08-11

鳥芳商店

代表者
大井治郎
創業
1978年
業種
鶏肉・焼き鳥・惣菜販売
住所
神戸市垂水区星陵台1-8-10
電話
078-782-9608
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新鮮な食材に真心と熟練の技を添えて

創業は1978年、妻の実家が経営する鶏肉販売業の芦屋店の店長として経験を重ねた後、独立し星陵台に店を構えた。当時は、人の行き来も多く、店舗が集積している地域一番のメインストリートといえる好立地であった。妻とふたり、店頭で焼き鳥の実演販売を重ねながら地域に溶け込んでいった。

「おいしさに真心こめて食卓へ!!」をモットーとする店主の大井氏。「鶏肉は鮮度が命ですから、朝びきに勝てるものはない」と淡路産の朝びき鶏にこだわる。
“朝びき”とは、朝に絞めた鳥をその日のうちに捌いて販売するもの。毎朝淡路島から神戸に入荷する鳥を仕入れ、店主自ら捌いている。内臓の処理等手間暇がかかり、技術と経験が必要なため、朝びき鶏を扱う店は少なくなってきている。熟成(腐乱)の進行を抑え、水分が失われないように、温度管理も重要。朝びき鶏は、捌く時点から肉の骨離れが違い、若い人の肌のように弾力があるという。スーパーで売られている一般の鶏肉と比べて若干価格が高いが、一度食べると病みつきになるお客も多い。引越しされた後も、鶏はお宅のじゃなきゃダメだ。丸鶏を焼いて送って欲しいといったリクエストが多く、クリスマスや年末・春先には地方配送の注文が舞い込む。また、丸々1羽を解体したものを真空パックにして購入される方もいる。
看板商品の焼き鳥のタレも自家製で、ガラからスープをとり、1日以上かけて仕込む。受け継いだ昔ながらの伝統の味を守りながら、季節や時代の変化に併せて塩加減や甘さをアレンジしている。
「お客様においしいものを食べていただく」という信念のもと、新鮮な食材に熟練の技が加えられた手作りの商品が店頭を飾る。お客様に部位それぞれの持ち味を活かしたおいしい食べ方をアドバイスする一方、「こんな商品が食べたい」というリクエストにもできる限り応えている。

「人は一人ではない。家族や友人に支えられ、自らも人を支えている。地域のお客様に支えられて今日があります」と大井氏は語る。遠方に嫁いだ娘さんのために「あなたはこの味で大きくなったのよ」と思い出を込めて送る(贈る)お母様もおられるという。
また、「私たちの商売は生き物を殺して成り立っている。鶏にとっても食べられることを幸せに感じられるように、常に供養の気持ちを持ち続けています」と生活の糧となっている鶏への感謝も忘れていない。年に1度、業界団体で鶏供養を行っているが、月1度のお参りも欠かさない。

街自体の成熟・老化とともに環境は変化し、周りの店舗も少なくなった。「震災後に娘が加わってからは店の形態が随分と変わりました。娘と一緒にやっていなければ、続けていなかったのではないか」と振り返る。
震災までは鶏肉・焼き鳥・唐揚げが中心で、他の商品も肝の佃煮など鳥に関するものだけだったが、今では、惣菜の割合が多くなってきた。惣菜も全て手作りにこだわり、日によって異なるが、常時15品は取り揃えている。
惣菜の割合が増えたのは、地域のお客様の高齢化が影響している。年を取ると、家庭料理するには量が多すぎるため作る機会が減り、少しだけ食べたいものを購入することになる。「1つから、100グラム以下といった、少ない量でも販売しています。高齢者の方への配慮で、必要な分だけ取ってもらえるようにしています。毎日の日替り奉仕品を楽しみに買いに来られるお客様もいます」、単なる商品の売り買いではなく、お客との対話を忘れない。
「もう一つ、震災後に変わったことは、いかなごも炊くようになったことです。初めは、生姜・ゆずぐらいの味付けでしたが、段々と種類が増えていき、今では、レモン、コチジャン、カレー、有馬山椒、チーズなどのバリエーションがあります。チーズは知っている人は少ないと思います。血圧の高い人には胡桃を上にのせたりもしています。お世話になったお友達やお客様、希望される方には全部作り方もお教えしています」と自らも調理師の免許を持つ料理好きの店主は、垂水の家庭の味、いかなごにもこだわる。
娘さんの影響や口コミで若い層のお客様も増えてきている。「あの子がいるからでしょうね。やっぱり、人と人との付き合いでしょうね」と店頭で接客する娘の姿をみながら目を細める大井氏。若いお客様は、「焼き鳥はここで買おう」といった目的買いの方が多いそうだ。
また、近所の幼稚園ではバザーやクリスマス会などが開かれ、同店では唐揚げなどを子供たちに提供するなど、地域に根づいた活動を行っている。

人と人の絆を何よりも大切にすることが、長年支持されてきた理由ではないだろうか。

(垂水支部 経営指導員 中根雅史)