No.21

2012-05-25

株式会社川北薬局

代表者
川北良博
創業
1921年
業種
調剤薬局、医薬品販売
住所
神戸市東灘区青木6-4-19
電話
078-411-7364
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地域医療に貢献する“街のかかりつけ薬局”

 神戸市東灘区青木に、90年以上続く老舗の調剤薬局がある。地元では「青木の川北さん」として名が通り、どんな事でも安心して相談できると評判の調剤薬局が「川北薬局」である。
 大正時代の初め、現代表の祖父である亀之進氏が、医者の書生として、国定看護師の妻こはる氏とともに四国・高松から神戸に赴き、大正10年に薬局を開設。兵庫県薬剤師会の重役を務め、日本の医薬分業に大きな功績を残した2代目の父・良彦氏が、川北薬局の礎を築いた。現在は、3代目となる良博氏が同じ薬剤師である夫人とともに、夫婦二人三脚で経営を引き継いでいる。

 どの病院で処方箋をもらっても、自分が薬の調剤を受けると決めた薬局のことを「かかりつけ薬局」というが、川北薬局は、些細な事でも気軽に安心して相談できる“街のかかりつけ薬局”を目指している。お客様と対面しながら、相談者の健康上の悩みや薬に関する相談に応じる川北氏は、「顧客との信頼関係があってこその商売。“親切第一”をモットーに、対話とコミュニケーションを何よりも重視している」と、常に丁寧な接客を心掛けている。

 「高齢者は、複数の医療機関から処方された薬を服用している事が多い。人によっては、家にある薬を全部店に持って来てもらうこともある。薬の種類や量を整理し、薬歴を確認しながら、薬剤の適正使用についてカウンセリングを行っています」と、川北氏。今では「医者に診てもらっても治らない時は、川北薬局へ相談すると良い」と言われるほど地域からの信頼は絶大で、特に高齢者にとっては“頼もしい存在”となっている。

 川北薬局が取扱う医薬品の中で、特徴的な薬が“薬局製剤”である。この薬局製剤とは、医師の処方箋がなくても薬剤師の判断のもと調合販売が出来る。いわば、薬剤師が作る手作りの医薬品で、一般のドラックストアでは手に入らない薬局独自の薬である。
 「薬局製剤を販売するには、設備や各種届出・許認可に加え、品質管理にも細心の注意が必要になる。何より作る手間がかかることもあり、薬局製剤を販売している薬局は数少ない」と、川北氏。現在、川北薬局で製造販売されている薬局製剤は4種類ほどあるが、中でも「川北のかぜ薬」と呼ばれる薬は、“驚くほど良く効く”と評判で、店のロングセラー商品となっている。

 毎月何百人と来店するお客からの相談は様々。自分の症状を訴え「どこの病院で診てもらえば良いのか」という問合せや、医者から処方された薬について、効用や処方の注意点などの説明を求められることもしばしば。顧客の要望に対して、常に笑顔で対応する川北氏の姿は、多くのお客の心を掴み、安心感を与えている。
 そんな川北氏にも時には失敗もある。ある時、お客が求める薬の在庫が不足した事があり、「その時は、お客様から凄い剣幕で怒られた」という。謝罪とともに薬を配達し、在庫管理の改善を約束。誠心誠意対応したところ「どんなことがあっても、自分はこの店でしか薬を頼まないと決めている。だからこそ怒った。これからも一生通い続ける」と言われ、お客にとっての店の存在、果たすべき役割について再認識させられた。「結果として、在庫管理の改善する良い機会となった」と、誠実な対応によって“ピンチ”を“チャンス”に変え、生涯顧客(ロイヤルカスタマー)を獲得する術に、学ぶべき事は多い。

 親子3代に渡って90年以上続く老舗薬局である“青木の川北薬局”の看板を掲げることは、自負心と同時にプレッシャーも背負う。
 川北氏は、2代目の父・良彦氏からよく聞かされていた「評判の良い店を作るには100年かかるが、その評判を失うのは一瞬である」ことを肝に銘じて、真摯にお客様と向き合う。 「どんな相談でも、懇切丁寧に対応する。ごく当り前な事です」と、川北氏。
 当たり前の事を、当たり前にする。来店したお客が「先生に相談して良かった」と、頭を下げて帰っていく姿は、選ばれ続ける薬局の証である。

 小泉政権下で進められた医療制度改革・自由化によって、薬剤師本人でないと開設できなかった調剤薬局も、薬剤師を雇用すれば開設できるようになり、薬に全く縁のない他業種からの参入が増えている。「自由競争の結果、効率化を優先するあまり、顧客への対応や安全性が二の次になり、医療サービスが低下している」と、警鐘を鳴らす。
 また、消費者の購買スタイルも、薬局の薬剤師に相談して薬を選ぶスタイルから、CMで見た薬を大規模ドラッグストアで買うスタイルに変化してきた。この流れを受け、製薬メーカーも対面販売を行う薬局向け大衆薬の製造を縮小してきている。
 このような時代の大きな変化や後継者不足もあり、川北薬局のような「街の調剤薬局」は年々、減少傾向にある。超高齢化社会をむかえ、在宅医療を受ける高齢者が増えることが予測される中で「在宅医療における薬剤師の役割は、今後ますます重要になる」と、在宅薬剤師の必要性を訴えるが、一方で、手間と時間に見合った報酬が得られないといった課題も残る。

 今となっては、数少ない対面方式を続ける川北薬局だが、地域医療に貢献する“街の知恵袋”として、今日も川北夫妻の温かい笑顔が、地域住民の健康を見守り続けている。

(経営指導員 小林和弘)