No.22

2012-05-25

株式会社三栄

代表者
服部鋭治
創業
1931年
業種
建築資材卸売
住所
神戸市兵庫区材木町1-2
電話
078-681-4131
E-mail
sanei☆sanei-kobe.co.jp ※☆を@に
ホームページ
http://www.sanei-kobe.co.jp
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「本物志向」の魅力

 神戸市兵庫区に流れる兵庫運河。その歴史は古く、明治時代に神田兵右衛門によって築造が計画されたことに始まる。運河に接する材木町は、明治時代より材木の貯木場として栄え、戦前には、何十もの企業が軒を連ねていたという。時代と共に水面を埋め尽くす丸太の姿は無くなり、多くの企業が撤退・廃業の道を辿っていく中、株式会社三栄は今もこの地に残り、たくましく事業を続けている。 

 創業は現社長の祖父にあたる服部孝一氏が、神戸港で港湾関連の仕事を始めたことに遡る。その後、鐘淵紡績からの機械梱包の仕事が主力となり、木材との関わりが増えていった。続く父・博孝氏の代になると、海外からの輸入した丸太を製材し、建築用材として材木屋へ卸すようになった。まさに、兵庫運河に多数の丸太が浮かんでいた時代である。あの情景を思い起こす人も少なくないだろう。

  現在もこの事業は受け継がれ、大型製材を扱う数少ない企業として、営業を続けているが、今日までの道のりは平坦ではなかった。同社では、17年前からオーストリア・エガー社の低圧メラミン貼りパーティクルボード(木材の小片を接着剤と混合し熱圧成型した木質ボード)の輸入を始め、システム家具の製作なども手掛けるようになった。現社長の鋭治氏は、「平成に入った頃から、丸太の数が減ってきていた。また、世の中の建築様式が変化する中、我々は何をしていったら良いのかを常に考えていた。時代に合うものを取り入れていきたいという想いがあった」と当時を振り返る。

  鋭治氏の読み通り、世界各国では木材資源の枯渇がさらに進み、丸太の輸入が激減した。必然的に運河周辺にあった多数の材木関係企業も撤退・廃業に追い込まれていく。しかし、当社ではエコ対応のパーティクルボードの扱いを増やしていたことや、事業規模を縮小しても収益を確保できる体制をいち早く整えたことにより、なんとか生き残ることができたという。「売上ではなく利益が確保できるもの、他社がやっていないものに集中できたことが幸いした」と鋭治氏はいう。結果的に、兵庫運河沿いに集積していた製材業の中、当社1社のみが残った。

  「常に将来に対する危機感を持ち、次の行動を検討し続けている」と社長は言う。阪神淡路大震災では取引先が被害を受け、商売に多大な影響が出た。また、当社が扱う「化粧材」といわれる建材を使用する和風の屋敷建築が激減し、工場で裁断された材料を組み立てるプレカットの家が増えるなど、同社を取り巻く環境は大変厳しくなっている。
 ただ、勝機は見逃さない。社長は「本物志向を貫きたい」と話す。近年は品質保持期間も20~30年の新築物件が多くなっている。家も「大衆消費材」となりつつあるのだ。裏を返せば「本物」を提供できる木を知り尽くした企業がなくなっているということだ。

  同社は長年の経験から、木材の本質「木質」を理解しており、木を活かしたデザインや使用方法に精通している。また、世界的に枯渇しつつあるカリンやチークなどの無垢材を在庫として持っており、良質な欧州の低圧メラミン貼りパーティクルボードも扱う。そのため、「本物」を使ったオーダー受注にも対応できるほか、顧客ニーズに対応した細かいアレンジやデザインが可能となる。

 必然的に同社の提供する木材や商品への信頼度は高まり、材木・家具などを扱うプロからも、相談が入るようになる。「本物にこだわり、良い物だけを提供すること。これが全てです。零細企業と一体となって仕事ができるもの、零細企業の武器となる材料を提供していきたい」と社長は信条を語る。 また、同社の魅力は木材だけではない。机やカウンターを作る場合も徹底的にお客のことを想って進めていく。作業現場を直接見てもらい、加工過程も全て見てもらう。そうすることにより愛着が湧き、長く大切に使ってもらえる。

 もうひとつ、同社が必ず行っていることがある。お客に木のストーリーを丁寧に説明しているのだ。世界で一枚しかない大きな木を使ったテーブルなどの場合、購入後は必ず友達を呼び、ストーリーや愛着を披露したくなるのだそうだ。さらに子供が独立していく時なども、引継いでいくという。数百年かけて成長した丸太を製材し、5年~10年寝かせるという息の長い仕事が、世代を超えるストーリーを生み出す。

  「近年は大型量販店等で安価な家具が提供され、短期サイクルで消耗品として処理されていく。リサイクルの意味もあるが、モノの価値を次の世代に伝えていく意味でも、良い木材を使ったモノを長く大切に使ってもらいたい。その中で世代を超えた新たなストーリーも生まれるだろう。何百年かかってやってくる木材は、最高の形で使ってあげないと申し訳ない。ストーリーをモノに付加していくことが我々の本来の仕事」と服部社長は語る。 

 インターネットの発達により、エンドユーザーも木材に関する情報を調べやすくなった。「最高にアナログな我々の世界をどのようにネットと融合させていくかが大きな課題でもあり、楽しみでもある。また、最近は手造りの家具屋を開業する若い人たちが増えてきている。彼らとの連携を図り、木材ユーザーの裾野を拡げていきたい」服部社長の夢は膨らむ。5年前より、長男の真俊氏が入社。老舗企業に新たな息吹を吹き込む。

 材木町の看板を背負う同社の挑戦は、まだまだ続く。

(経営指導員 若宮 豊)