No.40

2013-03-26

Jewel Core夢屋

代表者
桑村 栄男
創業
1976年
業種
宝石貴金属オーダーリフォーム・彫金教室
住所
神戸市垂水区北舞子1-3-39
電話
078-782-0158
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貴金属に吹き込まれる新たな命の灯

<創業の経緯>
 桑村氏は、東京で手広くファッションアクセサリー業を営んでいた伯父の影響を受け、幼少の頃より宝飾品に関わる業界に憧れを抱いていた。大学卒業後、小さな喫茶店を営みながら、閉店後の深夜にガラス細工を始める。当初は、全くの素人で工芸の知識すら無かったが、独学で専門書を紐解きながら知識を蓄え、熱したガラスと格闘しながら技術を磨き、地元のブティックから注文が舞い込むほどになった。「師弟関係から学ぶのではなく、独学で苦しみながら得た知識と技術だからこそ、他にはない個性的な作品を生み出しました」と振り返る。

 ガラス工芸で評価を得て、お洒落なブティックに出入りするようになると、ファッションに関する探究心が抑えられなくなり、海外のファッション誌を輸入販売する商社に就職した。欧米で流行する最先端のモードに触発され、ファッション感覚が研ぎ澄まされるにつれて、デザイン力の重要性を感じ始めた。「大阪教育大学で芸術を専門とする先生に教えを請い始めたところ、当時は学生であった妻と机を並べることになり、彼女の豊かな発想力と芸術的な感性に驚かされました」と二人の出会いを振り返る。

 その後、芸術論で共感し合った二人は結婚し、1976年、桑村氏は妻の京(みやこ)氏と共に宝飾品のリフォーム業を立ち上げた。開業すると、様々な地金が持ち込まれるようになり、求められる金属加工の種類も広がっていった。勉強熱心な桑村氏は、知人の高校教師や専門書を頼りに金属の性質や加工法を学び、専門家も舌を巻くほどの知識と技術を習得した。

 「お客さんから寄せられる要望を実現するため、無我夢中で学んでいるうちに色んな加工が出来るようになりました」と微笑む。夢屋では、桑村氏の貴金属に関する豊富な知識に加え、京氏の優れたデザイン力により、工房に持ち込まれたジュエリーは、次々と美しい輝きを取り戻していった。

<商品・サービスのこだわり>
 その後、夫婦の強みを活かしたリフォーム技術により、「宝飾品に関わる困りごとがあれば、どんな相談にも丁寧に対応して、美しく甦らせてくれる」と口コミが広まった。最近では、ホームページから見つけ出して、工房を訪ねてくる人も増えているという。どこのお店に行っても断られたという修繕の難しい宝飾品が持ち込まれることもあるが、柔軟に対応している。桑村氏は「全ての工程を自前で行うのは難しい面もあります。費用を抑え、時間も短縮するため、有能な職人仲間と連携し、最適な方法を提案しています」と語る。

 また、リフォームだけではなく、「手元にある指輪やネックレスを使い、自分だけのアクセサリーに作り変えて欲しい」というオーダーにも快く応じる。京氏は、宝石の組み合わせや形状を細かく聞き取りながら、期待を遥かに上回るデザインを創り出す。「デザインには、ひらめきや発想力だけでなく、お客さまの些細な言葉に込められたメッセージを汲み取る感性が求められます。じっくりと会話を積み重ねながら、具体的な作品イメージを固めていきます」と創作の心構えを教えてくれた。

<顧客との絆>
 桑村氏には、生涯忘れられない印象的な仕事がある。若い母親が、子供の乳歯でアクセサリーを作って欲しいと工房を訪ねてきた。事情を聴くと、入退院を繰り返していた4歳の我が子が亡くなり、その生きた証を忘れないように肌身離さず身に付けていたいと打ち明けてくれた。「乳歯を扱うのは初めてでしたが、母親の気持ちに応えたい一心で、妻と共にアイデアを捻り出しました」と当時を思い起こす。透明なクリスタルに乳歯が浮かび上がる秀逸のデザインに仕上がったペンダントを手渡した時の母親の顔は、今も忘れることができない。

 また、同店では、貴金属のリフォームだけでなく彫金教室も開催している。趣味でアクセサリー作りを始めた方から、芸術家として個展の開催を目指している方まで、受講生の輪は確実に広がっている。京氏は「いろんな人生を歩んできた生徒さんと語り合いながら、創作アイデアの新たな刺激を受ける貴重な機会になっています」と目を細める。

<今後の展開について>
 かつて日本には、モノを大切に扱い、壊れたら修繕を繰り返し、自らの生涯と共にする美しい文化があった。戦後の大量生産、大量消費に伴う“使い捨て文化”が普及するにつれて、日本の誇るべき文化を一変させ、そして喪失させてしまった。「確かにファッションの流行り廃りのサイクルが短くなり、次々と新品を買い求める人も増えていますが、我々は古いものでも、時代に合うオリジナルの愛着品に作り変えることができます」と力を込める。時代の流れにより、人の価値観が変化していく中でも、夢屋では、昔と変わらずモノを大切に扱う温かな心が寄せられ、その思いを輝くジュエリーへと昇華させている。「モノを大切に扱う人の心が無くならない限り、我々の発想力と技術は必要とされます」と柔らかな笑顔で語る。ジュエリーが紡ぐ人の繋がりを大切に守りながら、今日も夫婦の工房では、貴金属に新たな命の灯が吹き込まれる。

(経営指導員 髙森良明)