No.39

2013-03-26

Mデンタル

代表者
宮田 浩
創業
1989年
業種
歯科技工士
住所
神戸市西区今寺3-12
電話
078-974-3166
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輝く笑顔を実現する“歯科技工の匠”

<創業の経緯>
 創業は1989年、宮田浩氏が歯科技工所や歯科医院で勤務した後、垂水区内のマンションを仕事場として独立開業した。「納期が遅れたり、少しでも手を抜くと一瞬で信用を失ってしまいます。納期に追われる中、噛み合せや形状の細部に至るまで、丹念に仕上げるように心掛けました」と宮田氏は開業時を振り返る。元来の生真面目な性格と納期順守の徹底により、歯科医院から徐々に信頼を得るようになり、受注が立て込み始めると、仕事場に泊まり込む日が増えるようになった。「徹夜が続く激務をこなしながら、自宅と仕事場の往復を繰り返し、心身ともに擦り切れそうな日々でした」、宮田氏は静かに語った。

 95年、西区に仕事場と住居が一体となった戸建住宅を購入してからは、技工製作に打ち込める環境が整った。歯科技工士の資格を持つ妻の和代氏は、家事と育児を一手に引き受けながら、公私共に夫を支えてきた。宮田氏は、「妻とは、技工学校からの付き合いです。自分が必要とする機材や作業の流れを熟知しており、細かく指示しなくても必要な準備を段取りしてくれます」と妻への感謝を怠らない。

<職人として一番大切にしていること>
 歯科技工の作業は、患者に合わせた特注品を個別生産するため、きめ細やかな技術力に加え、多くの工程により、手間暇を要する。特に、被せ物であるクラウン製作では、噛み合わせや接触状態を寸分違わず合わせるのに、研ぎ澄まされた集中力と粘り強さが求められる。宮田氏は、「今でも製作に没頭して徹夜を繰り返すことは珍しくありません。納得のいく仕上がりを実現するまで作業を続けます」と職人の顔を覗かせる。取引先は、開業以来の付き合いになる歯科医院が大半である。正確無比な技術力だけでなく、妥協を許さない厳しい職人魂が、20年以上の取引関係に繋がっている。

<顧客との絆>
 製作したクラウンが自分の手元を離れ、患者の口腔内で体の一部として、時を刻むことに思いを馳せると、その責任の重さを感じるという。十数年前の技工物でも歯型を見れば、自分が作ったものだと一目で分かる。「以前に作った歯型が手元に戻って来ると、その患者さんと直接お話をしたことはないですが、自分の仕事を気に入ってくれたと感じ、嬉しくなります」と目を細める。

<輝く笑顔の実現に向けて>
 最近では、美意識の高まりと共に、従来の“痛い、噛みにくい”を解消する機能的治療だけでなく、見た目の美しさを追求する審美的治療が求められ、技工物の製作においても微妙な色合いや調和といった要素が欠かせなくなってきた。かつては、パターン化された色見本のシェードガイドで周囲の歯と色合わせをした後、歯科医から指示されたセラミックを加工していたが、現在では、患者の歯を撮影して様々なバリエーションの中から細かな色合わせを行うようになった。「口腔内の写真を基に歯の先端の透明感や微妙な色合いを調整する繊細な仕事が求められています。単純な色合わせではなく、歯全体の色調を整える感性も必要です」と審美歯科の奥深さを語る。

 歯のトラブルが原因で笑えなくなった患者に最適な技工物を提供し、笑顔を届けたこともある。「口元に自信が持てなかった女性に前歯を提供すると、歯科医院を通じて『久しぶりに人前で素直に笑えた。私の人生が再び輝き始めた』という言葉をいただきました。思わず胸が熱くなり、自身の仕事が果たすべき意義を改めて感じさせられました」と力を込める。

<歯科治療の動向を見極めた設備導入>
 宮田氏は、個人経営では珍しいドイツ製の高価な鋳造機や加熱炉をいち早く導入し、耐久性や強度に優れたジルコニアセラミックを使った技工物にも対応している。潤沢な資金を持つ業界大手は、新技術を率先して取り入れられるが、資金的に余裕がない個人経営の技工所では、費用対効果を充分に精査した上、新技術導入の必要性やタイミングを見極めなければならない。歯科治療の動向を正確に捉えるため、歯科技工士会の講習会や技工機器メーカーのデンタルショーへの積極的な参加も欠かさない。「技術革新の激しい業界であり、新しい知識と情報の吸収は必要不可欠です。業界の風向きを読み違えた設備投資を行えば、たちまち経営が行き詰ってしまいます」と気を引きしめる。

<今後の展開について>
 業界では、技工料を抑える動きが出始めており、価格競争の激化に危機感を抱く同業者も多い。宮田氏は「医療の分野に合理化を持ち込んでも容易にコストは下げられません。歯科医の時間単価と手直し時間の全体コストを考えれば、多少単価が高くても熟練の技術に対する需要は根強いものがあります」と自信を見せる。

 また、歯科治療の分野にも自動化の波が押し寄せてきているという。歯科用のCAD/CAMシステムが開発され、加工の難しいチタンやジルコニア等の素材を用いた技工物がボタンひとつで製作出来るようになった。少数の業界大手が最新鋭の自動化機器を導入し、瞬く間に市場を寡占化してしまう懸念もあるが、「機械の自動化だけで解決出来ないのが歯科技工の奥深さです。患者の笑顔を実現する丁寧な手作業が駆逐されることはありません」と静かに前を見据える。業界を揺るがす局面に対峙しながらも、黙々と技術を磨き続ける技工の匠に揺るがぬ信念を感じた。

(経営指導員 納田秀史)