No.38

2013-03-26

西神戸マイコン株式会社

代表者
鎌本 昭二
創業
1955年
業種
パソコン教室、ITサポート、システム販売
住所
神戸市兵庫区中道通3-4-3
電話
078-515-2468
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デジタルの世界のアナログ企業

 神戸市兵庫区にパソコンの創世記より、パソコンに関わってきた老舗企業がある。古くよりパソコンに親しんできた方は「マイコン」という表現に懐かしさを感じるのではないだろうか。今回は、西神戸マイコンの鎌本昭次社長と塔筋幸造専務にお話を聞いた。
 同社は昭和34年、西神戸機械有限会社として現社長の父が長田区に設立し、主にゴム加工・製造業向けの中古機械の販売を手掛けてきた。鎌本社長は学校卒業後、電気工事関係の会社で修行し、26歳の時に入社。新品の販売とは違い、中古機械はスポット販売が多い仕事だった。鎌本社長は「安定した収入が見込み難く、顧客とのつながりも短期的で、非常に難しい商売と感じた」と、当時を振り返る。

 そういう思いもあり、鎌本社長は昭和60年、新規事業としてパソコン事業部を立ち上げ、マイコンショップ西神戸を開設した。「パソコンは新たな商売でリスクもあるが、ゼロから商売を築ける面白さに惹かれた」という。当時、国内パソコン市場は創世記であり、商材、顧客開拓も全くのゼロからのスタートだった。日本電気の「PC-9800シリーズ」がヒットし、他メーカーからも家庭向け機種が出始め、マニアから一般消費者へのパソコン普及が進んできた時期であったが、参考になるビジネスモデルは存在しなかった。

 手探りのなか、ショップに訪れる顧客との会話などからニーズをくみ取り、取り扱うパソコン・周辺機器・ソフトの品揃えを拡げていったという。「ニーズは顧客の中にあります。お客様とのコミュニケーションを大切にしていれば見つけることができます」と鎌本社長は言う。現在、分社化し、独自経営を行っているソフト事業も、元々は顧客との対話に基づき、各種オリジナルソフトの開発に取り組んだ結果、生まれたものである。

 こんなエピソードがある。当時のショップは高速道路の入り口付近にあったため、渋滞時に、時間つぶしに来店されたお客様がいた。機器の説明や会話を行う中で、互いに打ち解け、近隣の大学教授ということがわかった。それが縁で、得意客としてお付き合いが始まり、その方との繋がりのなかで、教授の勤務先である大学購買部との取引にも発展し、現在も大学との取引が続いているという。「商売はどこにチャンスがあるかわかりません。どんな些細なことも丁寧に対応することで芽が出ると信じています。我々中小企業は、わずかなチャンスであっても、活かすことが重要です」と鎌本社長は強調する。

 パソコン機器の販売が一段落すると、販売店は、機器の活用方法についての提案の必要性が増してきた。利用価値をどう出すか、さまざまな機能が何に使えるかを提案しないといけない。「弊社では従前より、単に機器を売るだけではなく、ユーザーのパソコン活用策についてのきめ細かな提案を行なってきたため、慌てることはありませんでした」と塔筋専務は振り返る。これらの取り組みの結果が、現在、同社の主力事業であるITコンサル事業やパソコン教室にも繋がっている。

 顧客の開拓も大企業の手法ではなく、地元に根差した中小企業の小回りを活かし、顧客に期待以上の満足を提供し続けることを通じた、顧客による紹介が中心となる。そのため、紹介者の顔をつぶさないようにするのはもちろんのこと、購入者・紹介者双方に喜んでもらうため、価格ではない価値の提供を意識している。

 例えば、ハードディスクが不調になった場合は、新しい物に元データをコピーし復旧する。通常はそれだけだが、同社では、顧客のパソコンスペック等から判断し、サービスで手持ちのメモリーで増設を行い、処理速度を向上させ、快適な操作性を付加して戻すなど、顧客が求める以上の対応を心がけてきた。また、顧客の要望を聞き、旧モデルが合致すれば、新モデルではなく、旧モデルを売るという。一時的には販売単価は落ちるが、長いつきあいを重視する。「ご紹介を頂きましたら土日夜間問わず、お客様の元に飛んでいきます」、鎌本社長が言うと、「この社長の姿勢は、創業時から現在も変わりません」と塔筋専務は微笑む。

 社長のモットーは、「相手の身になって考えること」と「報いられぬ献身」。「商売は見返りを求めない顧客への貢献が必要です。見返りが帰ってくる、帰ってこないは気にしません」鎌本社長は淡々という。
 ITの分野は技術革新のスピードが速く、ビジネスモデルも5年ともたない。現在の同社の主力事業は、パソコン教室をはじめとするITサポート事業である。

 「ソフトはたくさんあり、機器も高性能となっていますが、まだまだ活用されていない例がたくさんあります。地域密着企業として、顧客の業務効率向上や豊かな生活をサポートしていきたい」と鎌本社長。また、塔筋専務は「高齢者の方もパソコンを使って、ご自身の世界を拡げておられます。パソコン活用策を丁寧に伝えていくことが必要です」とデジタルデバイドを解消する取り組みの重要性を語る。

 IT技術の進展は今後も進んでいくが、絶えずユーザー目線で顧客との対話を続ける地域に密着した同社は、顧客から頼りにされていくことだろう。デジタル製品を扱うが、対応は暖かいアナログな企業として...

(経営指導員 若宮 豊)