No.20

2011-12-27

白百合看護婦家政婦紹介所

代表者
明山和子
創業
1959年
業種
訪問介護・家政婦紹介所
住所
神戸市垂水区宮本町3-13レイシェスタ4階
電話
078-707-4698
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家族三代に亘り受け継ぐ、真心を込めたサービス

 創業は昭和34年、先代の明山貞子氏が、日本赤十字病院などで長く助産師として従事した後、その経験を活かして、JR垂水駅南の現在地で看護師・家政婦紹介所を立ち上げた。

 当時の医療事情として、病院内で患者の身の回りの世話をする看護助手の慢性的な不足が問題となっていた。貞子氏は、医療人の一人して、この問題の解決に少しでも役立てるよう、看護師OB等を家政婦として病院に派遣する紹介所を始めることを決意した。人材派遣や紹介業のノウハウなど全くなかったが、近隣の病院で地道に実績を積み重ね、市内の病院から序々に依頼が舞い込むようになった。

 明山家に嫁いだ現代表の和子氏は、多忙を極める貞子氏を支えるため、自然の流れで事業を手伝うようになった。義母の献身的な仕事ぶりを間近で見ながら、事業への遣り甲斐を感じ、やがて貞子氏からも厚い信頼を受ける存在となっていった。和子氏は「家政婦さんへの気遣い、お客様への誠実な姿勢・・この仕事に携わるうえで大切なものを色々と教わった」と先代との思い出を振り返る。
 平成9年に貞子氏が亡くなると、先代を慕ってきたベテランの家政婦さんを束ねる重圧も感じつつも「その遺志を引き継げるのは自分しかいない」と代表を引き継いだ。その後、時代の要請に応じて、平成12年、介護保険サービス事業への参入を決断した。

 「質の高い介護サービスを提供するためには、介護技術やノウハウ、専門知識だけでは足りません」和子氏はきっぱりと言いきる。「人が見せたくない姿で一番辛い時にお世話をする仕事、不用意な一言でお客様の感情が一変する瞬間もあります」と被介護者の心情を思い遣る感受性の大切さを教えてくれた。
 そして「感情の爆発を受けて、傷ついて落ち込むこともあります。そんな時は、どうすれば喜んでもらえるか、とことん考え抜くこと」と忍耐力の重要性も忘れない。

 介護の難しい認知症の高齢者をお世話する機会も増えてきた。気持ちを通わせることが出来ず、苦労も多いが、「過去に好きだったことを丹念に呼び掛け、昔の記憶を刺激する会話を積み重ねて、記憶を戻すことが出来たこともある」と粘り強い心のケアが、思いも寄らぬ結果をもたらすことを語ってくれた。「私達の仕事は、単なるサービスだけでなく、その中に込められた真心を届けること」…和子氏の言葉には介護事業への熱意と誇りが満ちている。

 平成12年、介護保険の施行で病院に完全介護が義務づけられるのに伴い、病院内で家政婦の付き添いが禁止された。和子氏は、「業界にとって大きな試練であったが、介護の専門知識を家政婦に習得させる絶好の機会となった。」と胸を張る。法改正の動きに先んじて、毎回20名を越える家政婦をヘルパー2級の研修に派遣し、現在では150名の家政婦のうち9割以上が資格を保有している。
 平成17年、同一人による泊まり込み家政婦の訪問介護が厚生労働省から条件付で認められた。認知症の高齢者や重度の要介護者を抱える家庭では、24時間体制で家政婦を常駐させることも少なくない。介護保険の適用で費用の一部が軽減され、家政婦サービスを併用した多様な介護プランが提案できるようになった。
 和子氏は、「ご家族と本人の希望を十分に聞き取りながら、双方が納得する介護プランを練り上げる必要がある」と各家庭の事情に応じた柔軟なサービスの提供に意気込みを見せる。

 未曽有の災害となった阪神・淡路大震災では、混乱する医療現場で一人でも多くのスタッフが必要とされた。幸いにも被災を免れた60代~70代のOGスタッフも集結し、被災で傷ついた患者の介護にあたった。和子氏は、「こういう時こそ自分たちの力が発揮できる。病院の看護婦と一緒に白衣を着て泊まり込みで働くスタッフの姿に改めて自分たちの存在意義を感じた」と当時の様子を振り返る。

 高齢化社会の進展で介護ビジネス市場は拡大しており、新しい事業所が商機を見出して相次いで参入している。垂水区では、既に100社近くの同業者が乱立しており、介護保険サービスの受注競争は激しさを増す一方である。
 そんな中、和子氏の支えとなっているのが、平成12年、23歳の若さで事業に加わった息子の憲司氏の存在である。
 当初は、女性の多い職場に抵抗感を感じていた憲司氏であるが、「同業者でも2代目、3代目が多いのが業界の特徴。祖母が始めた事業を発展させたい一心で遮二無二やってきた」と語る。

 現在、同事業所では、家政婦紹介業を抑え、介護保険サービスが事業の柱となっているが、この事業の成長には、憲司氏の貢献によるところが大きいという。
 憲司氏は、今後の介護事業の展望として、「増大する介護保険サービスの受注に対応出来る優秀なスタッフの確保と育成が最大の課題である」と指摘する。また、「介護保険サービスだけでなく、本業として培ってきた家政婦サービスを組み合わせ、生活全般をケアする提案力を磨いていく。これまでと変わらず、マニュアルではなく個人の感性を拠り所にした“真心のサービス”を守り続けたい」と力強く語る。気持ちを託したサービスで真心の大切さを説いてきた祖母の意志を引き継ぎ、母親と二人三脚で小さな紹介所を守り続ける若き三代目の姿に、この事業所の明るい未来を確信した。

(経営指導員 髙森良明)