No.18

2011-12-27

片山ヨガスタジオ

代表者
片山憲明
創業
1972年
業種
ヨガ教室
住所
神戸市中央区元町通1-10-4原田ビル5F
電話
078-392-3525
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誠心誠意、本気のレッスン40年

 元町商店街の一番街アーケードをほどなく歩くと、右手にスタイリッシュなビルの入口があり、上階に上ると、清潔感溢れるスタジオが現れる。片山ヨガスタジオである。
 迎えてくれたのは、同スタジオ代表の片山憲明氏と創業者の禮子氏。元町のオシャレでモダンな雰囲気が好きで約40年前に同スタジオをオープンした。昨今ではヨガブームなどの追い風もあり、沢山の教室ができ、一般的にも「ヨガ」という言葉が浸透している。しかし、創業当時は全く知られておらず、「生徒さんを募るには、本当に苦労しました」と禮子氏は当時を振り返る。

 もともと体がとても弱かったという禮子氏。アレルギー体質であり、常に体のだるさを感じていたという。40代になったころ、「整美(せいび)体操」を始めたのがきっかけでヨガに出会った。この時の体験が、今のスタジオ経営を始める大きな要因となった。
 初めは、少し良くなればとの気持ちで始めたが、続けるうちに自身の体に変化が起こっていくのを感じ、悩みであったアレルギー症状も日頃の気だるさもいつの間にか無くなっていたという。
 「この時の感動は一生忘れません。こんな良いことは世の中に広めていかねばならない」と禮子氏は決意を固めた。この想いが国内ヨガの第一人者でもある沖正弘氏が普及させた「沖ヨガ」の習得に繋がった。数年間、必死にヨガを勉強し続けた後、1972年6月、ついに自身の手でヨガ教室を開設することとなった。

 勢いで元町商店街4丁目にあった呉服屋の2階に教室を開設したものの、ヨガの認知度は低く、生徒がなかなか集まらなかった。しばらくの間、窓から商店街を通り行く人々を眺める不安な毎日を過ごした。幸いなことに、初期の生徒の中に地元の大手企業に勤務する女性社員がいた。仕事は大変忙しく、夜遅くまで残業が発生することもしばしばあったため、夜食の差し入れまでも行い、禮子氏は自分の娘の様に気遣った。ほどなくして信頼関係が生まれ、社内等で口コミをしてくれるようになったという。また、習いに来た人が徐々に効果を実感し、ヨガが体に良いとの口コミが広がっていったそうだ。こうして少しずつではあるが、生徒を増やしていき、今では250人もの生徒を抱える。

 また、同スタジオでは、マンネリを防ぐため、メニューの中に強化法や修正法など、絶えず新しい要素を取り入れ、研究を重ねてきた。特徴的なのはレッスン時間がとても長いことである。通常のヨガ教室では1レッスンあたり1時間であることが多いが、同ヨガスタジオでは倍の2時間である。しかし驚くことに、昔は3~4時間ものレッスン時間があったそうだ。
 「誠心誠意、本気で健康になってほしいという想いがありますので、どうしても時間が必要」と禮子氏は言う。1レッスン1時間では短すぎて、自身の想いが伝わらず、効果が出るレッスンができない。スタジオ経営である以上、当然ながら採算性が求められる。しかし「効率や採算性を優先していたら、このように時間をかけてレッスンはできません。皆に健康になってほしいという想いだけでやっています」と片山親子は口を揃えて言う。

 こうした片山氏の想いから生み出されたヨガレッスンは、着実に効果を上げている。現在レッスンをうけている生徒からは、血液検査の数値や血圧等が改善するなど、ヨガを始めたら健康になったとの声も多く、生徒自身の実感から信頼が生まれ、口コミとなり、新規入会者を作り出している。
 「健康への想いだけでやっていますから、特にお金を掛けた宣伝などやっていないのですよ。効果を実感してもらい、ついてきてもらう。商売ではない部分もある」と、憲明氏は言う。

 「誠心誠意」をモットーに、レッスンを続けている同スタジオだが、中味の濃いレッスンを提供し続けているが故の課題もある。それは、ヨガレッスンは究極のアナログの世界であり、「大量生産」ができないこと。クラス数やレッスン会場を増やしていくと、当然インストラクターの人数も増やさなくてはいけない。しかしながら、インストラクターの育成は容易ではない。人に教えられるようになるには10年はかかるという。

 敷居を低くし、即席のインストラクターを作ることは簡単だが、質が下がってしまうのである。特に片山氏の様な「健康になってほしいという想い」を共有し、誠心誠意伝えようとする人材を育てるには、一朝一夕ではいかないのが現実である。また国内では、男性インストラクターの数がとても少ない。「ヨガだけで生計を立てるのが本当に難しいのです」と憲明氏は言う。

 昨今では国内でのヨガブームなどもあり、ヨガの認知度は上がった。しかし、一般的にイメージされるのは欧米型のヨガであり、同スタジオが実施している内容とは少し異なってくる。「時代や世代別のニーズに合わせたサービス提案も不可欠です」と憲明氏は言う。
 同スタジオのメニューは、体験し、実感しないと分かりづらい部分もある。「今後はダイエットコースなど、外からも分かりやすいクラス編成を考え、若い人も参加しやすいようにしたいです。また、元町という立地を活かし、ともにヨガをする人が社会的な繋がりを持てる場にできれば」と憲明氏は今後の展望を語る。

 欧米型ヨガほど、派手さはないが、愛する元町で誠心誠意、スタジオに通う人が健康になってほしいとの想いでレッスンを続ける。想いは着実に受講生に伝わり、実感から生まれる評価、口コミが拡がって行くという同スタジオのスタイルは、今後も変わることなく続いていくのだろう。

(経営指導員 若宮 豊)