No.6

2011-08-31

有限会社紅萬

代表者
樋口昌三
創業
1912年
業種
贈答用・輸入国産果物小売、フルーツパーラー
住所
神戸市中央区栄町通4丁目3番5号毎日新聞ビル1F
電話
078-360-3943
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4代に受け継がれる最高品質

同社は大正元年(1912)の創業で、来年100周年を迎える老舗果物店である。鯉川筋で、現社長の先々代にあたる由松氏が果物屋を開業したのが始まり。当時から贈答品を主に取り扱っていた。1949年に念願の自社ビルを建てたのを機に、神戸では初のフルーツパーラーを併設。小さなスペースではあったが、フルーツジュースや紅茶、フルーツサンドウィッチ等を提供し、終日賑わった。

 順風満帆かに思われた経営であったが、1995年、阪神淡路大震災により、地元客に愛された店舗が全壊。「当時は絶望に打ちひしがれました。しかし、振り返ればこの苦難を経験し、乗り越えたからこそ今の紅萬があります」と社長の奥様で専務を務める節子氏は語る。ほどなく、跡地に仮設店舗を建て、なんとか営業の再開にこぎつけることができた。その後、ハーバーランドから出店の打診があり、2号店を出店。「当時、ハーバーランドへの来客数は現在と比較にならないほど多く、大変繁盛した」と、節子氏は振り返る。その後、阪神百貨店からも声が掛かり、大阪梅田阪神百貨店の10階へ出店。また、本店も鯉川筋から現在の場所に移した。本店は神戸・元町の情緒を残した外・内壁が魅力的で、落ち着いた雰囲気と高級感が漂っている。

 同社では社長が主に商品の仕入れ、専務が店売りを担当。また、次の世代であるご子息の大氏、ご息女の裕賀子氏も共に商品仕入と店舗、フルーツパーラーの運営に従事している。「社長は仕事に対してバカがつくほど真面目。良い商品を入れる事に妥協ができない人なんです」と節子氏。どんなに良い等級品を仕入れても、切って中身を見ることができない果物は、品質が悪いものが混じることもある。社長の長年の経験と熟練の目利きで入荷した全ての果物をチェックし、パスしたものだけが店頭に並ぶ(仕入れの約2割が社長の目利きにより、そぎ落とされるとのこと)。

 普通であれば、入荷商品の厳密な検品は、労力が増え、廃棄ロスも大きくなるため敬遠されがちだが、お客様に提供するものに対して、決して妥協をしないのが現社長の昌三氏。創業者である祖父の代からやってきたノウハウと仕事に対する真摯な姿勢は、先代の社長(2代目)、現社長(3代目)へと着実に受け継がれ、磨き上げられている。

 商品の仕入先開拓も尋常ではない。
 同社は、大阪や神戸の中央卸売市場を主な仕入れ先としているが、季節ごとの旬の果物に対しては特別なこだわりがある。マンゴーや金柑は宮崎日南の農園から、イチゴは鳥取の若葉農法で作られたものなど、全国の有名産地の中から、今現在最高のものを厳選し、仕入れている。良い農家の評判を聞きつけると、社長・専務がご夫婦で必ず現地に足を運び、使用している肥料、栽培の環境等々、を実際に自分達の目で確認。最終的には生産者とじっくり話をして、生産者の人柄を含め、納得した所から1番良いものを小ロットで仕入れている。

 節子氏は「良い果物を造る農家は、手間暇をかけ、よい肥料を用い、お金を使っている。だから、生産者の方も儲けて欲しいのです」と強調する。「人任せにするのではなく、自分の目で見て確かめ、納得した商品を仕入れてきているからこそ、多少値段が高くてもお客様に自信を持って説明し、提供することができる。手間隙はかかるが、手を抜くとお客様にわかるもの」と節子氏はいう。

 創業者である祖父から代々受け継いでいる座右の銘は次の2つ。
 一つ目は「商売は、屏風と同じものである」。屏風というものは広げすぎると倒れてしまうため、安易に事業を拡大してはいけない。自分の身の丈にあった範囲でコツコツとやっていきなさいという教え。
 二つ目は「不正は破滅なり」。不正を働けば、必ず自分に跳ね返ってくることを肝に銘じなさいという教え。
 「商品に妥協せず、本当に良いものだけを仕入れ、提供し続けているため、現在のお客様からの信頼があるのだと思います。努力をしているつもりはありません。当たり前のことを当たり前のように行っているだけです」
 創業者からの教えを受け継ぎ、家族が皆で協力することで老舗を支えている。

 近年、消費者の意識が高まり、価格や品質はもちろん、安全・安心や健康面に関しても非常に敏感になってきている。また、消費者だけではなく、果物を素材として扱う洋菓子店等からも、「イチゴはどこで作られたものか、どんな肥料を使って育てられたか」などについて、詳細な情報を求められる機会が増えている。そのようなニーズに応えるため、節子氏と裕賀子氏は率先して「フルーツアドバイザー」の資格を取得。果物の栽培方法など、自分達の扱う商品についてのきめ細かい情報提供を行っている。

 また、裕賀子氏の発案で、果物を花のように飾るフルーツアレンジメントを始めた。見栄えも良く、フルーツをカットする手間も省けるため、プレゼントに喜ばれ、女性からの人気が高い。またパーティや宴会等の引き合いも相次いでいる。常設ではないが、アレンジメント技術を教える教室を開催した際は、京都や大阪からも受講者が通う盛況ぶりである。 

 同社は、「お客様に季節の一番おいしいものを食べてもらう」という100年に亘る経営姿勢を貫きながら、フルーツパーラーの開設、新たな仕入先の開拓、フルーツアレンジメントの実施等々、店を受け継ぐそれぞれの世代が絶えず、消費者ニーズに合わせた変化(新しいサービス)を加え、地域に愛される店づくりを行ってきた。

 「果物なら紅萬さん」。客からの絶大な信頼を基盤に、次の100年に向けてさらなる発展を期待したい。
(インタビュー応対:専務取締役 樋口節子氏)

(経営指導員 若宮 豊)