No.30

2012-10-15

株式会社リバースケミカル

代表者
中田孝利
創業
1967年
業種
溶剤再生・加工販売
住所
神戸市北区道場町塩田山崎2636番地
電話
078-985-2061
大きい地図で見る

価格競争に打ち克つ職人品質

神戸市北区、三田市との境に位置する同社を訪れると、大きな蒸留施設が目に入る。すれ違う従業員は皆、「いらっしゃいませ!」と元気に挨拶をしてくれる。従業員の士気の高さから、経営者の人柄が垣間見えるようだ。迎えてくれたのは、社長の中田孝利氏と妻で専務の敬子氏である。

中田社長は大学卒業後、港運会社で営業職として勤務していたが、約5年後に退社し、独立開業の道を模索し出した。大学の先輩を通じ、当時、関西ではまだどこも手掛けていなかった「使用済溶剤の再生加工及び販売」というビジネスに出会った。「この事業には大きな可能性を感じました」と中田社長。当時は、カラー化、大量生産の流れが時代のトレンドとなり、車・プラスティック・ラベルなどの製造が拡大。それらの塗装や洗浄に必要なシンナーの利用量が爆発的に増加していたが、再生処理ができる化学工場は少なく、大手メーカーでも廃溶剤をそのまま外部へ流している状況が珍しくなかった。

「初めは5人でスタートしました」と中田社長は振り返る。車両は4t車1台のみ、現在5基ある蒸溜プラントも3基しかなかったそうだ。東京の会社から溶剤再生プラントのノウハウを買い、使用済み溶剤を関西圏の大手メーカーから回収し、蒸溜プラントで塗料や不純物とシンナーを分離する加工技術の確立に奔走した。主力販売商品である再生シンナーは、水分が多いと製品に吹き付けた時、水が浮き出てくる。この水分をいかにして抜いていくかがポイントとなる。水切りがしにくいものほど、良いシンナーであるが、コストは跳ね上がってしまう。創業後も、試行錯誤の連続であり、品質が安定した良い製品を効率良く作ることができるまで3年以上かかったという。結果的にプラントは独自の工夫を凝らしたフルオーダー品に近いものとなった。

「良いものは高い。安売りだけはしたくない」と中田社長。これは中田社長が従業員に徹底している理念でもある。同社は水蒸気蒸溜という方法で再生シンナーを製造している。当製法は使用済みシンナーに付着した臭いをかなり落とせるものの、手間隙とコストが掛ってしまう。

「他社に価格競争で負けても、気にしません。一時的に安い方に流れても、本当に良いものを作り続けていれば、必ずお客様は戻ってきます。当社の製品は工業製品ですが、手造りという面が強い。あえて時間をかけても、良いものを作っています」中田社長は揺るぎない自信を見せる。現に、再生シンナーを実際に使用する取引先の現場作業員は作業時に、いくらコストが安くても、においが気になるものだ。現場の意見から、結果的に同社に戻ってくるケースが多いという。

このように、同社は製造業ではあるが、職人集団的な気質が漂う。「弊社は人で成り立っています。従業員の人柄も重要な要素です。きめの細かい仕事ができる職人的な人間を育てたい」と社長はいう。中田社長が好きな言葉は「誰恨むことなかれ、全ては自業自得である」。従業員には「仕事でも奥深くやる人と浅くやる人がいる。俺は奥深くやる人が好きだ。あとは自分で判断しろ」とよく伝えるそうだ。運搬の担当者であれば、ただ製品を運ぶだけが仕事ではない。挨拶や礼儀作法、顧客との関係作りなど、会社を背負っている一員としての意識を高く持ち、行動するよう指導している。朝はリーダーが中心となり心構えを唱和し、出発するトラックを皆で気持ち良く送り出す。また、人としての質も高めるために、四文字熟語での啓蒙も毎月行っているという。

同社の工場内はとても綺麗で、整理整頓が行き渡っている。溶剤の運搬に使うドラム缶も磨くほどの徹底ぶりだ。同社は積極的に顧客を工場に招き、現場を見てもらっているという。「廃棄物処理の現場は危険で雑然としている」というイメージを抱いて同社を訪れた顧客は、一様に驚き、同社への信頼を深めていくという。「お蔭様で取引先からは、リバースの製品はきめが細かいと褒められます。我々中小企業はいろんなものに手を出さず、全社員が一丸となって、品質を磨き続けることが大切です」中田社長は微笑む。現在も、「リバースだったら間違いない」との評判を聞き、取引のない大企業から声がかかるそうだ。

また、中田社長は「会社の宝である社員に残業はさせたくない」との想いから、定時退社を徹底している。人間誰しも疲れが溜まるとミスが起り易くなる。化学工場で危険物を取り扱う同社の場合は、一度事故が起これば取り返しのつかない事態に発展しかねない。また、疲れはモチベーションの低下にもつながる。社員に厳しくプロ意識を植え付けると同時に何より社員を大切にしている姿勢が垣間見える。

社内の風通しも良い。例えば設備投資等で金融機関から借入を行った場合、全従業員に伝えるという。他にも社内で起こったトラブルや問題点は全てオープンにする。隠し事は一切しないそうだ。情報共有が進むことで、従業員全員が当事者意識を強く持ち、日々の業務に従事できることにより、仕事の質とモチベーションも大きく高まるのだ。

将来を見据えた布石も打っている。業務が拡大し、本社工場内の製品保管スペースが手狭となったため、2年前に三田市に倉庫を設置し、物流の拠点とするようになった。神戸三田のインターから10分の位置で利便性が良く、近くに工業団地もあるため、取引先の開拓も見込まれるという。

各従業員のプロとしての高い意識ときめ細かい職人技を突き詰め、価格競争に陥ることなく、高品質の製品づくりで顧客の満足度を高めていく同社の姿勢は、中小企業の目指すべき姿ではないだろうか。

(経営指導員 若宮豊)