No.15

2011-11-17

株式会社温調サービス

代表者
井上 孝
創業
1978年
業種
空調機器設備の保守・工事修理業
住所
神戸市須磨区白川台6-12-5
電話
078-791-4600
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次につなげる仕事、20年サイクルの関係づくり

創業者の井上氏は、高校卒業後、製紙会社に研究員として勤めてしていたが、元々は電気工事関連の仕事をしたいと考えていた。そこで一旦、水道設備の会社に転職し、配管や電気工事について、七年間修業を積んだ後、三十七歳のときに、自身が会社の新規部門として担当してきた空調保守部門をのれん分けのような形で託され、独立開業した。垂水区内のアパートを事務所として借りてのスタートだったという。
井上氏は、姫路で大工をしていた父親から「大工は、あの家はうちが建てた家だと、その出来の良し悪しに係わらず、代々言われる。村の中で短期的な考えで金儲けをしてはいけない」と幼少の頃から教わってきた。今の時代はとにかく安くという風潮があるが、安くてそこそこの物を提供するより、ある程度値段が張っても、顧客にとって値打ちがあるものを提供する方がよいという父の信念を受け継いでいる。

現在、同社が行っているのは、ガスや灯油で動く大型空調機器のメンテナンス業務だ。盆、正月もほとんどなく、お客さんが困っている時にすぐに駆けつける。大手メーカー系のメンテ業者は、修理依頼を受けると翌日以降の訪問になるケースもあるが、当社では中小企業ならではの小回りを活かし、必ず即日訪問し、大概の故障はその場で修理する。顧客のトラブルを即解決することで、信頼が高まっていく。また、突然の故障を防ぐため、部品の耐用年数を勘案し、壊れる前に直していくのも保守サービスの大切な仕事だ。
本来の保守サービスの範囲は、室外のみであるが、室内の配管や水漏れ等にもなるべく対応しているという。顧客の要望を受け、専門外の分野に対応することは、従業員にとっても勉強になるケースが多く、専門外・保守サービスの範囲外の仕事でも積極的に取り組んでいる。

保守サービスの仕事は、一人前に修理できる様になるまで七年を要す。今では指導していた社長よりも、現場に出ている従業員の方が故障個所を見つける勘が働く。一人前になると電話を受けた段階でどこの部分に不具合があるか見当がつくという。
交換用の部品等を持って現場へ向かい、中古部品を使ってひとつひとつ試しに取り換え、故障箇所を絞り込み、確定すれば新品の部品を投入することで顧客の負担する費用を抑える。一つの故障で十個の部品交換の可能性があり、長年の勘が活きてくる。たくさんの電池の中から、切れた電池を探り当てるようなものという。
現場には、常に若手社員とベテラン社員の二人で行く。若手社員は先輩の仕事を見て習う。これは、仕事を教えるという目的の他に、ビルの屋上の隙間を渡る命がけの現場や、ポンプ・モーター等で事故があったときなど、危機管理の側面もある。

大型の空調機器のように高額な設備を購入するお客さんには安定した大手企業が多く、好不況の影響はあまり受けない。逆に言うと、売上が爆発的に増えることもない。また、耐用年数も電気空調機と比べ、二十年と長いため、買い替えのスパンが長い。
同社では、機器導入はメーカーにお願いし、導入後、二十年間保守サービスで守り、サービス内容で信頼を構築し、次も買っていただくのが仕事と捉えている。

機器入れ替えの際は、今までやってきたサービスの評価が出てくる。うまく顧客と繋がっていれば商機もあるが、機器入れ替え時の合い見積もりに負けない顧客の信頼、絆の強さが必要である。二十年間メンテナンスしてきても、合い見積もりで顧客を失うケースもある。
「顧客に、いつでも来てくれる。トラブルを解決してくれるという評価がいただける様、日々努めています」と井上氏はいう。「良いことを十回やってもなかなか誉められないが、悪いイメージを一回与えるとそれで終わりです」。同社の社員は経験上、それはわかっており、先輩から若手社員に代々伝えられているという。

かつては、「サービスはタダ」と言われたこともあったが、保守サービスは有料という認識も拡がってきた。節電機運が高まる中、現在、太陽熱を取り入れてガスと併用する空調方法への切り替えによる節電が注目されており、今後、新たな需要が増える可能性があると考えている。
井上氏は、「保守サービスはおまけ的な要素が多い仕事です」と謙遜されるが、同社の二十年サイクルの長期的な顧客との関係づくりと中小企業ならではの小回り・サービス精神が、次の二十年の仕事を創っていく。

(経営指導員 納田秀史)