No.33

2012-12-25

株式会社渡辺農園(ブルーミンメドー)

代表者
渡辺拓也
創業
1935年
業種
造園・園芸・ブライダル・レストラン
住所
神戸市東灘区本山中町2-9-2
電話
078-453-1187
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地域と共生し、都会に緑豊かな癒し空間を提供

〔昭和10年に創業〕
低層マンションが軒を連ねる神戸市東灘区本山中町。閑静なその住宅街の中に、忽然と緑溢れる洋風庭園が広がり、壮麗なログハウスが立つ。まるで海外の別荘のような空間。造園・園芸業、㈱渡辺農園の本社である。昭和10年、現代表、渡辺拓也氏の祖父岸三氏が、地元資産家から農園を買い取り、現在地で園芸・造園業を興した。父邦也氏は、繊維系商社マンだったが、太平洋戦争に兵士として出征。復員後、岸三氏の事業を手伝い始め、やがて2代目として事業を継いだ。

邦也氏が、代表として経営の第一線に立った昭和40年代は、高度経済成長期の真っ只中。社会資本の整備が急速に進められ、公園や街路樹の植栽等の公共緑化工事も活発に行われた。邦也氏は、これをチャンスと捉え、公共緑化事業に積極参入、旧建設省関連の国道の街路樹整備や一級河川の維持管理等を多数受注するなど業容を拡大していった。

〔3代目への転機〕
会社が急速に成長していった当時、邦也氏は、家庭の中でも絶対的な存在だった。学生だった渡辺氏は、父に対して畏敬の念を抱きつつも、その大きすぎる存在に反抗心も芽生えていたという。家業のため大学では造園学を専攻したが、本意ではなかった。卒業後、父への反抗心と本来希望していた人文系学問を学ぶため、家族の反対を押し切り米国へ留学。現地の大学で心理学を修め卒業後も帰国せず、地元邦字経済新聞社の記者となり、米国で知り合った現夫人倫子さんと結ばれた。米国での生活もすっかり定着していた渡辺氏だったが、昭和60年、父邦也氏と従業員から連絡を受け、「事業を継いで欲しい」と強く懇願された。米国永住の決意を固め、永住権も取得していた渡辺氏だったが、年老いた父や従業員の生活を考えると無闇に断ることも出来ず、悩み抜いた末、後ろ髪を引かれながら、5年後米国を離れ神戸に移住、3代目を継いだ。

〔震災が結んだ地域との絆〕
在米中の渡辺氏も、家業のことが頭の中から消えていたわけではなかった。米国で造園に関する新しい情報に接すると、記憶の中に刻み込んでいった。帰国後、同氏が最初に取り組んだのも、米国で知った新型環境緑化工法の日本への導入だった。それは「ワイルドフラワーによる緑花工法」と言い、厳選された野花の種を混合して播き、街中に山野の花畑を再現するもの。同氏は、日本の風土で育つよう父と技術開発を重ねたが、気候が異なる日本では中々満足の行く結果が得られなかった。

新事業に乗り出して数年後、ようやく”日本版ワイルドフラワー緑花工法”は確立し、官公庁を中心に普及活動を展開。高速道路や駅前広場、埋め立て地、地方の花博など順次、採用の輪は広がっていった。渡辺氏は、全国を駆け巡り、新工法の普及に努め、数百件の施工実績を築くに至った。「この工法で全国制覇しよう」。そんな野望に燃え,忙殺の日々の中、阪神・淡路大震災に見舞われた。自宅兼本社は全壊、夫婦とも生き埋めになったが、折り重なった壁が空間を作り、奇跡的に助かった。

震災の経験は、渡辺氏の意識を大きく変えた。「復興の中で地元との交流が生まれた。中小企業は地域と共に歩み、地域に根をおろし、貢献できる存在でなければならない。それまで事業一辺倒だった自分を震災が目を覚まさせてくれた」と同氏は振り返る。復旧にあたり、新社屋を、地元に喜ばれる花と緑を満喫できる空間にしたいと考え、5年の歳月を経てログハウスとモデルガーデンを完成。ここを「ブルーミンメドー」と名付けた。ブルームは花咲く、メドーは草原を意味する。

〔新事業への挑戦〕
震災後、阪神間はさらに開発が進み、空地はビルや住宅や駐車場になり、造園のニーズは減少した。そこで、新たな事業の柱を築くべく、生まれ変わった新社屋を活かして、平成12年、ガーデンウェディング事業とレストラン業に進出した。同業の造園業者らから冷やかしも受けたが、渡辺氏には勝算があった。「癒し」をキーワードに、本業の技術を活かして、花と緑の演出を凝らし、アットホームなおもてなしを徹底した。

こうした取り組みが奏功し、週末のウェディングは数カ月先まで予約で埋まるなど好調である。競争が激しく撤退する企業も多い中、今や地元婚礼業界老舗の存在となった。「結婚式でご利用頂いたお客様が、その後も、結婚記念日などで度々レストランをご利用頂くなど、お付き合いの長い方々も多い」と渡辺氏はほほ笑む。

平日も近隣の主婦達が集い、美味しいフレンチと癒し溢れる庭園を楽しんでいる。「周辺の方々にとって清涼飲料水のような非日常空間になっている」と同氏は静かにに語る。今や、ブライダル&レストラン事業は造園業と肩を並べる程に育った。因みにガーデンは、今年度神戸まちなみ緑花コンクールにおいて、応募総数190作品の中から、「神戸市長賞」に輝いた。

〔経営環境変化への対応と今後の展開〕
渡辺氏のモットーは“凡事徹底”。「経営環境が目まぐるしく変化する現代こそ、当たり前のことを真面目にこつこつ行うことが大切、その姿勢が信用を生み、経営の安定に繋がる」と同氏は言う。また「国内の造園市場の縮小は避けられない」と分析する同氏だが、悲観はしていない。「時代の流れと共に衰退するビジネスもあれば新しく生まれるビジネスもある。ピークの時に先んじて次の一手に着手しておくことが大事」と強調する。

「造園については、ビルの屋上・壁面・地下街・高速道路など、これまで緑化が困難であった特殊空間にワイルドフラワーの技術を生かし、今後もチャレンジしていきたい。またブライダル&レストラン事業は、今後も『癒し』をキーワードに、時代に即した事業を展開していきたい」。渡辺氏の“次の一手”はまだまだ拡がる。

(経営指導員 鍛治町明子)