No.36

2012-12-25

有限会社フジワラクロス

代表者
藤原 卓二
創業
1978年
業種
建設業(クロス・壁紙の張り替え)
住所
神戸市垂水区西舞子7-2-21
電話
078-784-7774
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卓越した技術力で感動を生み出す“職人の良心”

創業は1978年、代表者の藤原卓二氏は、内装資材の卸問屋で勤務した後、クロス職人の下で技術を習得し、垂水区で開業した。
卓二氏は、大阪の卸問屋に就職すると、内装工事部門に配属された。資材の売買だけでなく、現場に入って職人の作業を手伝いながら、取引先との関係を深めていった。「商売は、口先だけでは通用しない。誠実さを行動で示し続ける“商いの道理”を学んだ」と振り返る。

独立を志して25歳で会社を退職し、らつ腕と評判の親方に弟子入りした。卓越した技術力で自立して生きる職人の逞しさに心惹かれたが、厳しい徒弟制度での修行は苛酷を極めた。早朝から刷毛を使った糊付け作業に追われ、親方から糊の分量と刷毛の扱い方を厳しく叩き込まれた。「基本作業を腕の感覚が無くなるまで繰り返し、親方の些細な動きに目を凝らして観察し続けた」と雌伏の時を思い起こす。厳しい修業を経て、親方から一人前の職人として力量を認められたのを機に、垂水区の自宅に「フジワラクロス」の看板を掲げて独立した。

クロス張りを美しく仕上げるには、繊細な指先の感覚が求められる。壁の凹凸をパテで細かく潰しながら、表面を均一に処理する作業では僅かな見落としが命取りになる。卓二氏は、「従業員が不十分な下地に貼ったクロスは躊躇なく剥がして貼り替える。自分を偽ることなく、やり遂げるのが“職人の良心”だ」と力を込める。

クロス張りは、大工仕事の仕上がり具合に左右されることもあるが、「下地の状況が多少悪くても、創意工夫で綺麗な表面に仕上げることは可能」と力説する。どんなに酷い凸凹や歪な角であっても、コーナーテープ等の副資材を駆使して、丹念に下地づくりをすることで、継ぎ目が分からない美しい仕上がりを実現してきた。
一方、自身の信念を頑なに貫きながら、腕利きの職人を育て上げてきた。「当社の技術を支えているのは、若い頃から厳しい現場で黙々と20年以上も働き、施工技術を磨き続けてくれた弟子達だ」と目を細める。

内装業では、仕上がりの微妙な違いからクレームに発展することも珍しくはない。特にクロスは、サンプルで想像したイメージと実際に施工した部屋の印象が変わることが多く、施主の細かな要望を汲み取る必要がある。
4年前から家業に加わった息子の考児氏は、施主の好みを丁寧に聞き取りながら、大量のサンプルからイメージに合った色と柄のクロスを提案する。日々の居住環境を彩るクロス選びでは、徹底的に意見を交わし、お互いに納得がいくまで決して妥協はしない。「施主とイメージを擦り合わせる作業を繰り返しながら、プロの視点で本人が気づかない意外な色調や柄を提案して喜ばれると、苦労が一瞬にして報われる」と考児氏は微笑む。

同社は、顧客に密着した事業活動を信条としている。工事完成後には、「施工箇所に不具合があれば、遠慮なく連絡して欲しい」と施主に欠かさず葉書を出している。定期的な訪問でクロスの状況を点検することもあり、日常生活の中で生じる小さな傷や穴を見つければ、その場で素早く修理を施すことも少なくはない。「近隣の施主が多いので、どんな些細な相談でも現場に駆けつけて迅速に対応している」と地域に密着したサービスを強調する。きめ細かな対応の積み重ねで得た信頼により、顧客の輪を着実に広げてきた自負がキラリと光る。

建設業界では、長引く不況に加え、業界内の熾烈な生き残り競争が激しさを増している。施工単価の下落が進み、価格の叩き合いが激しくなると、馴染みある同業者の廃業が相次いだ。職人技を習得するには、並々ならぬ努力と忍耐力、豊富な経験と長い年月が必要とされ、人材育成は容易ではない。卓司氏は、「安易な経済性や合理性に傾くと、これまで業界を支えてきた技術が伝承されず、将来的に大きな損失に繋がる」と険しい表情で語る。

激しく揺れ動く業界の動向を冷静に見据えながら、卓二氏は「誠実な気持ちを行動で示し、顧客を喜ばせるのが商売の基本」と若き日に学んだ教訓を考児氏に語りかける。この先にどれ程の厳しい状況が待っていたとしても、「これからも変わらずに施主との対話を大切にし、期待を上回る生活空間に仕上げて喜びを提供し続けていく」と親子は意気込む。

長年に亘り、培ってきた卓越した技術力に加え、顧客のニーズを的確に捉えた提案力に磨きをかけ、地域住民に感動を与える“町のクロス屋”は小さな光を放ち続ける。

(経営指導員 髙森良明)