No.13

2011-11-17

㈱財田建築設計事務所

代表者
財田俊作
創業
1970年
業種
建築企画・設計・監理、住宅コンサル
住所
神戸市灘区山田町3-1-15
電話
078-821-7443
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信用を蓄積する設計・監理のプロフェッショナル

 財田氏は40年以上に亘り、市内を中心に個人住宅から集合団地、レジャー施設、医療福祉施設、教育施設など多数の設計を行ってきた。財田氏が「建築」の道に進んだきっかけは、終戦後、焼け野原となった神戸の街を前に、戦後復興に欠かせない「住宅建設業界」の発展を予見した教師を務める父の言葉だった。

 高校の建築科を卒業後、当時、「建築設計の学校」と言われていた県内で有名な建築設計事務所に就職、そこで建築設計の基礎を徹底的に叩き込まれた。「社員同士の競争もあり、寝食を忘れて猛勉強した。仕事の合間に、図書館で借りてきた海外の雑誌や参考文献に掲載されている住宅や建物のトレース(複写)を繰り返していた。これが建築家としての原点」と、修業時代を振り返る。

 その後、仕事を通じ、尊敬する先輩を介し商才溢れる新進気鋭の工務店経営者と巡り合い、同社へ就職。以降10年間、経営者の右腕として、建築設計の基礎に加え、事業としての活きた仕事・実務を覚えた。1970年、家庭の事情もあり、独立を決意、個人事務所を立ち上げた。当時は住宅着工も増え、大変忙しかったが、数はほぼ行き渡り、住宅も「量から質」に転換の時期でもあった。

 「設計建築の仕事は、依頼者があって初めて成り立つ仕事。『設計図+設計者の頭脳』を商品とするならば、『相互の信用』こそが、唯一の頼り」と創業以来、「信用の蓄積」を行ってきた。財田氏は、顧客との信頼関係を構築するため、お互いが理解を深めるための努力を一切惜しまない。出来るだけ多くの時間を費やし、雑談も交えながら趣味や嗜好、理想まで、施主と徹底的に本音で話し合いをするという。

 「時には、施主と意見が合わない場合もある。単に施主の言う通りに設計するのが楽だが、それが最善のプランとは限らない。使い勝手など、これまでの経験や、設計者としての責任と自覚を持って最大限努力したベストなプランを提案し、双方が納得・理解出来るまで議論を尽くす。それでも意見が合致せず、折り合いが付かない場合は、仕事を断るケースもある」という。ただ、最終的には、施主から感謝されることが多い。

 また、もう一つのこだわりが「周辺環境との調和」である。
「たとえ小さな建築でも、都市景観にとっては大きな要素であり、建物の外観に関しては半公共的なものという想いがある」。特に神戸のような美しい街に建てる外観については、周辺の都市景観や街並みに溶け込むように最大限配慮しつつ、施主の要望に応えている。「目立つ」建物よりも「地域に馴染む」建物づくりにこだわる。

 こうした財田氏のスタイルは、顧客との関係を長期間維持・拡大することにつながっており、高いリピート率にも顧客との信頼関係の強さが現れている。ある医師とは、独立前から半世紀近い付き合いになるという。最初の依頼を受けて以来、これまでに何度となく自宅や併設する医院の増築や改修などを手掛け、最近では、医院をご子息に譲る際にも改造工事を引き受け、親子二代に亘って顧客との良好な関係が続いている。

  財田氏は、今日まで事業を継続してきた要因の一つとして、「自社で目の届かない規模の仕事は無理に受けず、身の丈に合った仕事に全力で取り組み、本業に専念したこと」と身の丈経営を挙げる。バブル期の金融・不動産業界からの誘いや大手商社からの大規模分譲開発監理等の依頼もあったというが、財田氏は、マイペースを崩さず、設計業務に専念したことで、バブル崩壊後も大きな損害を被ることはなかった。

 また、「職能人である以上、精一杯努力して、良い結果を出すのは当たり前」と、財田氏は言い切る。当初は、依頼者からすると一見高く思われがちな設計・監理費用も、時間と苦労を重ねて設計し、完成した建物を見た時に「依頼をして本当に良かった」と感謝の言葉をもらうことも多く、「その一言のために仕事をしているようなもの」と、仕事のやりがいを語る。
 建築設計・監理のプロフェッショナルとして、自らの仕事に対する社会や環境に及ぼす影響について責任を自覚するとともに、その誇りと志の高さを感じさせる。

 財田氏が工務店に勤務していた昭和40年代前半は、まだ日本に2×4工法が導入される前であったが、当時から、最先端の工法の研究や技術開発を重ね、実際に同工法を取り入れた住宅建設も手掛けてきた。また、環境問題に対応した住宅の建築や、平成18年に施行された「障害者自立支援法」に基づく福祉施設の建築も手掛けるなど、時代の変化に対応した建築に積極的に取り組む姿勢は、今も変わっていない。

 現在は、事務所スタッフの後進の育成・指導に力を注ぐ一方で、神戸市が開設する「すまいるネット」にアドバイザー登録し、個人の住宅建設に関わる契約上のトラブルや相談にも対応している。加えて、これまでの豊富な経験と実績をかわれ、顧客からの要望に応じて、個別案件に対しての業者選定や建築見積額の適正評価など、コンサルタント業務も行うなど、活躍の場は多方面に及んでいる。

 近年は住宅・設計業界も産業化が進み、財田氏のような「たたき上げ」の建築家が少なくなってきている。いくら大手ハウスメーカーや設計事務所による産業化が進んでも、大手にはできないきめ細かいスキマは存在する。また、CADソフトやインターネットなどIT技術が進展しても、仕事を構想し、創造していくのは人である。事務所の若手職員にも、設備設計業の協力事務所、建材メーカーの担当者との面談など、対話を重視し、対話の中から何かを掴むよう指導しているという。

 「誠実に仕事をする、身の程をわきまえる」、時代が変化しても、建築設計・監理のプロの仕事は続いていく。

(経営指導員 小林和弘)