No.14

2011-11-17

キタイハウジング

代表者
北井勝美
創業
1972年
業種
建築リフォーム工事、インテリア
住所
神戸市北区広陵町6-174-1
電話
078-583-8620
大きい地図で見る

効率を捨て、信頼を積む経営

 神戸市北区にあるリフォーム店。訪れると、ご主人が屈託のない笑顔で迎えてくれる。キタイハウジング創業者である北井勝美氏である。同社は昭和47年の創業で、景気低迷や価格競争の激化などの影響を受け、中小の同業他社が苦戦し次々と廃業していく中でも、地元地域にしっかりと根を張り、創業40年を迎える老舗の事業所である。だが、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。

 北井氏は若いころから、自身で商売を起こし、経営者になりたいとの夢を強く持っていた。そのため、営業手法などを学び、開業資金を貯めるために必死で働いた。一度は大手企業に勤務していたが、自身の夢を実現するため、先輩の会社で修業の後、独立。当初はカーテンや絨毯などのインテリアの販売を行っていた。公団住宅や分譲住宅の鍵渡し、部屋見披露の際に受注するというもの。これは非常に有効であった。北井氏は「何といっても新居への入居予定者と、一番初めに直接会うことができるのですから、これほどのビジネスチャンスは他にはありません」と当時を振り返る。確かに入居予定者は、部屋のインテリアをどう揃えるか検討していることが多い。ここから販売のきっかけを作り、事業を軌道にのせていった。

 実は独立後の事業を軌道に乗せた要因がもう一つある。インテリア商品には膨大な種類があるが、通常、販売業者はある程度商品を絞って客に提案する。確かに選択肢が少ない分、迷わなくて済み、短時間で決めることができるメリットはある。しかし北井氏は違った。分厚いサンプルを下げ、客の好みに耳を傾け、納得いく商品が決まるまでトコトン話に付き合った。
 もちろん時間もかかってしまい、販売効率は落ちるように見える。「でもね、効率なんて考えてないんですよ。効率重視の強引な営業はしたくもないですし。お客様の気持ちを大切にし、喜んで頂けるのが一番うれしかった。だから頑張れたんじゃないでしょうか」。自分は不器用で経営が下手、その分、経理面を預かる妻には迷惑をかけたと北井氏は言う。
 同業者の中には、効率よく商談を次々とまとめ、ビルを建てたところもあるそうだ。一見遠回りに見えたが、顧客からの信頼は積み上がっていき、現在の同社の経営を支えている。親子二代にわたりリピーターとなっている人も少なくない。

 その後バブル崩壊を経て、国内全体の景気が落ち込む。室内装飾は異動シーズンしか動かない。そんな中でも、過去の得意先を一軒一軒地道に営業にまわっていると営業先から徐々にリフォームの相談が舞い込むようになった。始めのうちは、知り合いの大工を紹介していたが、顧客からクレームが出始めた。「仕事を紹介した大工が、お客様の要望通りにやってないのですよ。びっくりしました」と北井氏。客からの信頼を一番にしている北井氏にとっては、深刻な問題であった。

 そこで、自らリフォーム事業に取り組むことにした。大工とともに必ず現場に足を運び、自分の目で確認するスタイルを守った。北井氏は「お客様を絶対に満足させる」と、不備などが見つかれば、徹夜でやり直す場合もある。完璧な状態でリフォームを完了するのだ。また、業務に携わる職人に関しても、礼儀正しくお客と接することができ、真摯に仕事に打ち込める人間に業務を任せることにしている。このような地道な努力が、顧客満足と信頼に繋がっている。「おかげさまで、40年近くやってきて、これまでにクレームはほとんどありません」と、北井氏は自信を見せる。

 ある時、道を歩いていたら、すれ違った車からクラクションが鳴った。よく見ると、過去に風呂のリフォームを行った顧客だった。クレームかと心配したが、「あのリフォームは良かったよ。最高だった」と車の窓越しに声を掛けてくれたそうだ。「私の顔を覚えていてくれたこと。私の仕事に満足してくださっていること。声を掛けてこられた時、嬉しくて涙が出そうでした」と北井氏は振り返る。
 創業以来、徹底的にお客様主義を貫く北井氏。利益率に関係なく、各メーカーが取り扱うリフォーム商品の中から、建材・客の好みや要望に合わせて、一番良いものを提案し続けている。自身の効率や儲けよりも、客の満足を一番に考える姿勢が、おのずとファンを作っているのだ。

 一方、市場が縮小する中、生き残っていくためには、時代のニーズに合わせた新たな商品提案も必要だ。「お客様に教えてもらうことがたくさんあります」と北井氏。7年前、お客様から「社長のところ、光触媒の塗装できる?」と問い合わせを受けた。当時、光触媒の外壁塗料は、一般家庭用としてはまだよく知られていない商品だったので、メーカーに問い合わせるなど一生懸命に勉強し、施工法を学び、無事、光触媒を使った外壁塗装を受注した。

 光触媒塗装は従来の塗装と比べ、単価は上がるが、防汚性能がとても高く、長く綺麗な状態が保てるという利点がある。7年前に行った外壁は、現在もピカピカだという。汚染物資の除去や、空気浄化の効力もあり、近年eco商品への関心が高まり、通常の塗装では無く、光触媒の塗装を選ばれる方が増えている。
 商品に自信を持ち、顧客に提案すると、信頼関係ができているため、合い見積りを取らずに納得して買っていただけるという。顧客に支えられ3年連続メーカーの敢闘賞を受賞した。「日進月歩で新しい商品が次々と開発されています。常に好奇心を持って情報を得、お客様の多様なご要望に答えるよう努めています」と、顧客満足への努力を忘れない。

 「信頼こそが一番大切。欲張りたくないんです」と北井氏の言葉通り、広告宣伝もしない。ビラも撒かない。手を拡げず、地元に根を張り、目の届く範囲で与えられた仕事を丁寧にこなしていく。顧客の信頼を得、口コミが中心というスタイルは泥臭くもあるが、地域に愛され、顧客に愛される、真に価値ある事業所の様相ではないだろうか。

(経営指導員 若宮 豊)